どの家庭にもひとつはある本棚。パパ、ママ、子供と家族それぞれの趣味、嗜好で選んだ本を、キレイに整理整頓しているのが一般的です。その普通の本棚も、並べ方や見せ方を少し変えるだけで、素敵なインテリアにも、コミュニケーションツールにもなります。今回は、本のスペシャリストである安岡さんが、楽しく、そして生活を豊かにしてくれる本棚の作り方を教えてくれます。
株式会社メメックス代表/ハックネット・ディレクター。ニューヨーク州立大学のグラフィックデザイン科を卒業後、現地の広告代理店に勤務。帰国後、1997年に株式会社メメックスを設立。同時に洋書を媒介として、多くの才能ある人々が出会う「洋書ハックネット」を大阪・南船場にオープンさせる。人と本をつなぐ、ブックコンシェルジュとして、本を使用した商業空間のコンセプト、メイキング、プランニングや企業プロモーション、商品企画のデザイン発想支援などもおこなっている。
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ひとえに並べ方といっても、たくさんの方法があります。ここでは、パパ、ママ、子供、それぞれに合った配置方法をご紹介いたします。是非、お家の本棚の参考にしてみてください。
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今回、使用したテクニックはV字型配置というもので、フォーカルポイントという、一定のルールにより1つのポイントを作ることで、人の目を誘導させるという作用を活かした配置方法となっています。Vの中心から左右に本を分けるという方法で、人というのは本棚を右側から見る人、左側から見る人の2種類に別れ、右側に洋書、左側に和書を置き、雑誌などもまとめることで、本棚のコンセプトを分かりやすくしました。パパの場合、仕事と趣味の本を分け、さらに見栄え良くキレイに並べることで、男性好みの本棚になります。またグラデーションで揃えていくという方法などを使うと、さらに見た目もキレイでインテリアとしても映えます。ポイントは、並べた時にキレイに見えるように、色のバランスなどを考えながら並べることです。
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ママの本棚は、より実用的なものがいいと考え、今回は、中央に平置き部分を設けて、本棚の奥行きを活用し、使用頻度の高い本を前に、頻度の低い本を奥に。と、家事、育児、趣味、雑誌など様々な本を持つママにとっての実用的な配置としました。また左右にカテゴリーを揃えることによって、実際にその人がサッと使える、活用性の高い本棚とのを意識しました。キレイに並べたがる男性と比べ、女性の場合は、実用性を重視する方が多い傾向にあるので、自身が目で本を追った時に、どういった見え方をするのかなどを考えて、よく使う本であれば、上下を少しズラして置くなどの工夫をしながら本を並べていくと、個性的な本棚になります。また、パパよりも雑誌が多そうなママの場合は、判型を揃えて並べていくのがキレイに見えていいと思います。
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本を並べるというのは、我々の業界用語で“スキャン”していくという行為で、その人がこれまでにどういった本と接してきたのかなど、経験値が分かるものなのです。特に子供は好奇心が旺盛なので、ジャンルも幅広く、ありとあらゆる本を持っているというのが特徴です。また、子供の場合は、知育という、その子がどういった過程で育って行くかという重要な部分もあります。子供の本棚を作る場合、しっかりとカテゴライズできるものではないので、色やカタチなど視覚的に、分けていくということがポイントです。大きな本から小さな本へと流れる左下がりの並べ方となり、色合いもバランスよく合わせています。子供らしいアクセントとして、可愛い動物のオブジェなどを置く、さらに子供が本に興味を持ち、親しみを感じれるような本棚になります。
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本を整理するときは、大きめのテーブルや床などの上に、大きさや色、そしてジャンルなど、表紙でカテゴライズをし、一度まとめてから並べていくと、作業もスムーズに行えます。背表紙だとどうしても面が小さいので、ビジュアルとしてのイメージが捉えにくく、その点、表紙だとタイトルとビジュアルがしっかりとしているので、その本がどんな本なのかというアタリがつけやすいんですよね。また、国内の雑誌は比較的判型が同じものが多いので、そういったものは、同じ判型で揃えていくのがキレイですね。
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キレイに並べること、それも良いのですが、本棚にテーマを持たせることで、普段とは違った配置となり、そこから新たなコミュニケーションが生まれます。小さなセレンディピティ(幸せな偶然)もそのひとつです。 今回は、すぐにでも実践しやすく、見た目にも美しい、インテリア要素の高い色別(ブルー)の配置。そして個性的で、興味心をくすぐってくれる国別(フランス)の配置をご紹介いたします。
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見た目にも美しい色での統一。並べ方としては、シンプルかつインテリア的な要素も大きいテーマです。今回のカラーは「青」。パパ、ママ、子供の本、それぞれ背表紙が濃淡を問わず、主に青色を使用している本を集めて、並べてみました。スタイルとしては、視覚的にも部屋映えのするV字型配置を選びました。アイキャッチとして、普段なかなか見ることのない、極寒の地の美しい風景が撮影された「THE ARCTIC TREASURE OF THE NORTH」を入れてみました。
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見た目よりも、その関連性で魅せる並べ方が「国別」。ただ、キレイに並べているだけでなく、一冊、一冊を見ることで、その繋がりが分かるというテーマです。今回、選んだ国は「フランス」。絵本、小説、建築からファッションまで、フランスに関わる本を集め、配列しました。こちらも、見た目に美しいV字型配列を用い、アイキャッチとして、「アンリちゃんパリへいく」というアメリカの有名なグラフィックデザイナー、ソウル・バスが手掛けた名作絵本を入れました。
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色別「青」や国別「フランス」という関連性を用い、本の整理をすること、それが自然と本と向き合うということになり、そうした時間が大切になります。本の整理は基本、楽しく、遊び感覚で良く、こうしたテーマを設けて配置をすることで、パパとママ、そして子供の本が程よく交じり、まさに家族皆の本棚となります。今まで気にしていなかったような自分以外の本が目に入り、手に取ったり、読んだりすることで、より家族を知ることができ、それが会話に繋がって、新たな家族のコミュニケーションが生まれてくるのです。
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ここでは、僕がおすすめするパパ用、ママ用、子供用の3冊をご紹介します。この本たちはきっと、あなたの本棚のキーブックとなってくれるはずです。
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一家の大黒柱として、ビジネスやその生き方など、常にチャレンジ精神を持ち続けていく。そういったものを、奥さんや子供に見せていって欲しいなという思いから、この本を選びました。様々な自転車がある中、あえてスピード(速さ)を追求したロードバイクに絞って掲載。自転車界のトップに位置するロードバイクを見ることで、その美しさや、速さを追求した高い技術力を知り、きっと刺激を受けるはず。パパは、これを本棚に入れるだけで、家族にもアピールできる一冊です。
The Competition Bicycle
Jan Heine/Jean-Pierre Praderes
UNIVERSE BOOKS
7,875円(税込)
自転車の最高峰、ロードバイクに絞った一冊。これまで、世界で活躍した名選手たちが乗った自転車が掲載されている。ロードバイクの歴史も知ることができ、ギア好きな人にもおすすめ。
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Salad for Dinner
Complete Meals for All Seasons
Jeanne Kelley/Jonathan Gold
UNIVERSE BOOKS
5,523円(税込)
サラダを単なる前菜ではなく、組み合わせ次第でディナーにもなりえるものとし、それを実現するレシピの数々が掲載。いずれも、野菜と他の食材(肉や魚など)を組み合わせた、栄養バランスを考えられたものとなっている。健康ブームの中、家族の台所を支えるママは、皆のカラダのことを考え、酵素がたくさん含まれる、野菜を中心とした食事を作っているのではないかと想像し、この本を選びました。本の中では、サラダでもディナーにもなりえるものを紹介。レシピに加え、盛りつけかたやお皿選びなどの参考にもなる、目にも楽しいビジュアルブックとなっています。ママがインスパイアーされてほしい一冊です。
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いわずと知れた名作中の名作「星の王子さま」は、世界中で翻訳をされています。その中でも、珍しいのが、このカルーゼルブックと言われる、回転式の立体的な絵本で、オリジナルは、イギリスで出版されました。星の王子さまの中でも、とくにユニークなもので、本の形状に加え、光の当て具合によって、見え方も変わってくるという懲りよう。子供から大人まで楽しめ、読めて飾れる一冊です。
The Little Prince: A Carousel Book
Antoine de Saint-Exupery
EGMONT UK
4578円(税込)
フランスの小説家、アントワーヌ・ド・サン=デグジュペリの代表作。全世界で翻訳され、売り上げ数は8000万部を超える。その中でも、珍しい立体的なカルーゼル(回転式)ブックタイプ。
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本棚というのは頭の整理、趣味、嗜好の整理となるものなので、不定期にすることで、自分自身の整理ともなり、親がその行為を子供に見せることで、本棚というものは整理をするものなのだと、教えるいい機会でもあります。人に見せる本棚にしたければ、本棚に自身のアイコン的なものを取り入れたり、今回の ようなテーマをもった見せ方をするのが効果的です。ただ、気をつけなければいけないことは、人がパッと見たときに、うるさくなくならないようにすること。コレに気をつければ、きっとあなたたちだけの素敵な本棚になるはずです。
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