独自のセンスとフレキシブルな考え方で、住宅、商業施設、ランドスケープからインテリアデザインまで、幅広く活躍をしている建築家、谷尻誠氏。常に新しいものを探して採りいれ、さらに人とは違った発想で魅力的な設計を手掛けている。「不便さの中にある豊かさやセンスのよいルーズさ。そして一般的にゴミと呼ばれているものを資源と呼ぶ発想力」そんな既成概念にとらわれない、見た目にも面白く、住む人を楽しい気持ちにさせてくれるという彼の手掛けた住宅を訪ね、そこから豊かな暮らし方のヒントや新しい住宅のカタチを学ぶ!
建築家。広島・東京の2ヶ所に事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を構え、住宅や商業空間、イベント会場、複合施設、ランドスケープの企画・設計・監理から、リノベーション、コンバージョンの企画・設計・監理、そして企業のまちづくりのデザインコンサルティング、さらにはプロダクトやインテリアのデザイン、制作まで幅広く手掛けている。常に新しいものを探し続けていくこと。建築をベースとして、新しい考え方や新しい建もの、新しい関係を発見していくことを目標に、活動の場を広げている。
http://www.suppose.jp
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2007年5月に完成した呉の家。コの字型の外壁を互い違いに組み合わせたデザインが特徴の住宅。地上2階、地下1階。施主である山本さんのお気に入りの場所は、普段PCでインターネットを楽しんでいるというデスクスペース。奥さんは夏と冬で雰囲気が変わるリビングがお気に入り。クルマの駐車スペースには石を配し、落ち着いた雰囲気を演出しながらも、しっかりと防犯効果にも優れている。
この家は施主である山本さまから「コンクリートとウッドを組み合わせたイメージの家を」というご要望をもとに設計をした家となっています。玄関を入ると、すぐ目の前にバスルームがあるという配置になっていますが、これは普段ほんの少しの時間だけ使用するバスルームを、使用しないときにはオープンにし、玄関と繋がる空間とすることで、広く見せる効果を与えています。脚のない階段はデザイン性にも優れ、軽やかな雰囲気も演出してくれます。天井が高く、開放感のあるリビングには、オリジナルの家具も設置させていただいています。完成から7年経っていますが、山本さまの奥さまが整理整頓好きな方なので、すごくキレイな状態を保っていただいていて、自分としてもとても嬉しく思います。
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2011年9月に完成した富士見町の家。外観は、一見すると一般的な分譲マンションと変わりないが、玄関のドアを開けると想像とは全く異なる空間が広がっている。一番の特徴は部屋の中央部分に設けられた室内縁側。施主である山田さんのお気に入りの場所は、大の趣味である自転車を背中に感じることができるデスクスペース。一方、奥さんはリビングから見る眺めがお気に入りという。
こちらのマンションは分譲住宅で、部屋の中心部分にある縁側が大きな特徴となっており、ホームパーティの際も活躍しているようです。施主である山田さまも、ご自身の趣味である自転車がしっかりと置ける部屋ということで、ご満足いただけているようで、壁にかけた自転車も見せる収納として素敵です。この辺りは、緑や自然が多く、その自然と部屋との繋がりをイメージし、設計をおこないました。部屋の敷地のなかに家を建てたという感じです。中央の部屋は寝室とストックルームとして活用されているようです。ライトのスイッチもトグルタイプにし、使いやすいよりも使いたくなるものを目指しています。「帰ってくるのが楽しい、帰りたくなる家です」と山田さんに言っていただけているのはすごく嬉しいことです。
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僕が建築家を目指すようになった原点は、育った家ですかね。僕の育ったところは長屋で、ちょっと変わった家でした。雨の日には傘をさして台所に行ったりするような。子供の頃は、そういう家が嫌だったので、大人になったら大工になってお城を建てるって言っていたのを覚えています(笑)。そもそも僕の場合、「建築家になりたい、住宅を手掛けたい」というスタートではなく、自分が暮らしていくための仕事だったんです。でも、仕事をしていくうちにだんだん面白くなってきました。家づくりに関しても、僕は、利便性を求めるのではなく、住みやすい家よりも住みたい家をつくりたいと常々考えています。愛着があると利便性を超えて大切にするので、そういった部分を見つけられるようなものを考えながら、僕は住宅をつくっています。そのために、施主さんとも色々な話をたくさんし、その人の好みや性格、もの選びなどから、”愛着”に繋がる糸口を探しています。僕のインプットは人と会うこと、そこから色々なものが生まれてくるんです。住宅づくりは、コミュニケーションが大切。そこが面白いところなんです。だから事務所が大きくなったとしても、住宅は続けていきたいですね。
僕は住まいの豊かさというのは、外の空間(庭)にあると考えています。賃貸やマンションでいうならテラスですね。外でごはんを食べたり、お酒を飲んだり、昼寝をしたりするのって、家の中と比べて気持ちがよく、美味しさや心地よさも2割増しじゃないかと思っています。そんな魅力的な外の空間が生活の一部になれば、もっと暮らしも豊かに、楽しくなると考えているんですよね。それと個人的に以前から”こんなところに住んでみたいな”と考えているのは、照明のない家。太陽は365日、空の上にあり、毎年同じ動きをしていますよね。自然なのに、規則的な動きをしている唯一のものだと思うんです。その太陽の軌道に応じて、建物のカタチや窓の位置を決めた家をつくれば、自然の力(太陽の光)を取り入れた生活ができますよね。そんな自然な時間の流れに従いながらの生活にずっと憧れています。ちょっと不便かもしれないけど、それ故に新たに気づかされることがある。そういう豊かさも僕はアリだと思います。
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1955年に完成した、建築家の丹下健三さんが設計された建物で、あの時代にコンクリートであのようなものを作ったということが素晴らしいと思います。それとピロティがいいですよね。ピロティの下というのは、雨宿りに人がきたり、動物がきたり、近くのOLさんがお昼を食べにきたりと、ピロティの下で色々な物語がうまれます。建物というのは機能をもとに作られているのがほとんどですが、ピロティは機能がない場所なので、それ故に様々な物語がうまれるような気がします。その感じが個人的に好きです。
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1954年に完成した建築家の村野藤吾さんが設計された建物で、僕も広島を訪れる人によくおすすめしている場所です。あそこまで細部にわたってつくりあげた彼の執念を感じますし、色々なところに命が宿っている気もします。もし「お金と時間をあげるからつくってください」と頼まれたとしても、なかなかあの領域までいけない気がします。完全に勝てない感じがしますし、才能を超える何かがありますよね。村野さんの建築は細かな部分までデザインがいきとどいていて、まるで建物が生きているような感じがするんですよね。本当にすごいと思います。
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