服やアクセサリーといった身につける品から、インテリア、テーブルウェア等の生活用品、そして趣味趣向性の高い雑貨まで、人は様々なモノに囲まれて生活をしています。モノを選ぶ際、個人の好みやこだわりを持って手に入れることが多いのに、それらは次第に古くなり、また使わなくなって仕方なく捨てられていくのが現実。”思い入れのあるモノだから、捨てるのは惜しい”と皆さんは考えたことありませんか?今回は、モノの価値を考え、新しいアプローチによって、リサイクルをおこなっているスペースをご紹介。教えていただくのは、リサイクルの新しいカタチを提案するセレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」を展開している株式会社スマイルズ代表の遠山正道さん。改めてモノの価値を考え、楽しくモノと付き合う生活をしてみませんか!
株式会社スマイルズ代表。1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、「giraffe」、「PASS THE BATON」「100本のスプーン」を展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。
PASS THE BATON
www.pass-the-baton.com
モノを大切にし、長く使用している愛用品が沢山あるという遠山さん。その中でも特に大事にしているのがこのショートパンツ。
「22年程前に現在の家に引っ越した際、近くのOKURAというお店で購入したパンツで、それ以来ずっと穿き続けているものです」
「もうかれこれ4回くらいは修理に出しているのですが、直しても次は破けたところの周りが弱くなって…。キリがないんですよね。でも好きなのでまた直して穿いてしまうんですよ。他にもジャケットやスーツなど、長く愛用しているものは結構あります。それらの魅力は、自分が大事に使っていて、育ってきたというその過程が大きいと思います。もし、これらと同じ形のものが新品であったとしても、きっと魅力は感じません。愛着を持って使っているとさらに愛着が湧くんですよね。価値というものは人それぞれで、このパンツの場合、自分にしか分からないことかもしれませんが、そういう部分を分かってもらえる人がいたら嬉しいですよね」
「勿体ないな」という考えが発端となり、そして思いついたのがリサイクルショップ。第一弾として今までにはない個人のセンスや人となりが伝わる新たなセレクトリサイクルショップを丸の内にオープンした。
過去を消し去り、販売をするというリサイクルショップが多い中、誰が持っていて、どのような思いで使っていたのかに価値を見出し、出品者の顔とプロフィール、そしてモノのストーリーをつけて出品するのが大きな違い。
オープン当初は、まだFacebookのようなSNSもなく、顔やプロフィールを出すことに抵抗もあるかなと考えていたため、まずは著名人の出品からスタート。現在では、モノのストーリーが多くの人に賛同してもらえるようになり、思い出のバトン(購入した方が出品者に宛てて手紙を送る)システムも好評を得ている。
「実際のところ、ビジネスというのものは中々そう上手くはいきません。常に危機に瀕したりして。ただ単にかっこいいから、流行っているから、売れそうだから、また外からの噂や情報だけで始めてしまうと、いざそういう状況になった時に耐えられないんですよね。自分自身、何があってもそれにしがみついてやっていくんだ!というくらいの気持ちがないとすぐにダメになってしまうと思います。やりたいことをやる四行詩というものが自分の中にあって、それは『やりたいということ、必然性(なぜやるのか)、意義(周りを納得させるもの)、今までにない(オリジナル)という価値』。最初にしっかりと根っこがないとダメなんですよね」
表参道は様々なアイテムがところ狭しと並び、ギャラリーなども設けたストリートな感じだが、京都は100年以上の歴史を持つ町屋を改装して、京都らしい落ち着いたイメージに仕上げている。
店内に並ぶ商品としては、京都の伝統工芸品や着物、そして味のある和食器など、京都に馴染みのあるものが集められている。
和の雰囲気がたっぷりの店内。一般の出品者からリサイクル品を預かる出品専用カウンターも落ち着いた雰囲気となっている。
”すでにあるものを大切にし、新たな価値を創造する”というコンセプトのもと、伝統的建造物を改装した京都の街並みにとけ込み、またパスザバトンらしいセンスを感じさせる京都祇園店。インテリアデザインは丸の内店、表参道店と同じくWonderwall 片山正通氏(http://www.crevia-times.com/learn/29/)が手がける。「元々、次に店を出すなら京都がいいなと考えていました。古いものを大事にして成り立っている街ですし、相性もいいなと思っていたので。その時、ちょうどコンペの公募が出ていたので、応募をして、開店に至ったという経緯となっています。京都は観光客も多く、これまでとは違った楽しみ方として、飲食スペースも併設しました」
新たに設けられた飲食スペース「お茶と酒 たすき」。昼は喫茶、夜はバーというスタイル。「おもてなし」の心で、お客様を迎えている。
「現在、考えていることはふたつあります。ひとつは、スマイルズが作家として、昨年は越後の芸術祭に出展したので、今年は瀬戸内の芸術祭への出展を考えています。古い一軒家を借り、そこをホテル形式で作品にしようかと。企業がアートをする意義は難しいのですが、そこから新たな価値を見出すことができたら良いなと考えています。もう一つは、社外の人との協業、例えば一冊の本を売る森岡書店という銀座の小さな本屋(個人事業等)への出資など。規模が小さければ小さいほど、個人の魅力や能力を最大化できるのではないかという考えからです。これを続けて、仲間がたくさん増えれば、次に何かをやろうとなった時に色々なアイデアや力が集まり、良いものができるのではと思っています」
人気の記事ランキング
-
高知・梼原町を魅せる|隈研吾建築
建築家・中村拓志氏のサステナブル建築案内 Vol.1
-
世界にひとつだけの空間を|DIYで、自分でつくる!
TOOLBOX・来生ゆきさんに学ぶ壁を使った簡単DIY
-
休日散歩~茗荷谷~
ライター薮下佳代が訪れる、休日の街散策
-
CREVIAで自分らしく暮らす|「CREVIAな人」
スマートなエクステリアのアレンジでリラックスできるバルコニーに!
-
「ワンダーウォール」に学ぶ|アートのある住まい
インテリアデザイナー片山正通氏の事務所「ワンダーウォール」からアートと暮らすヒントを見つける!
-
プロに学ぶ|スマートフォン撮影術
SNSでカッコいい写真をアップするためのガイド
LEARN
-
「サウンドクチュール」に学ぶ心地よい音と香りの見つけ方
-
DIGITAL TRANSFORMATIONIoT・AIがもたらす新たな豊かさとは?
梓設計、AI・IoT導入リーダー岩瀬功樹氏に聞く
-
SUSTAINABLE LIFE「住まい」から考えるサステナビリティ
サステナブルな生活をスマートに始めよう
-
デザイン先進国オランダドローグデザインのいま
レフトハンズ大野重和が、アイントホーフェンを訪ねる
-
新たな可能性を生み出す場所「Innovation Space DEJIMA」
チームデジマが語る「DEJIMA」という場所
-
「AZERAI」に学ぶ“おもてなしの美学”
生方ななえが探る「AZERAI CAN THO」〈後編〉
-
「AZERAI」に学ぶ新たなデスティネーション
生方ななえが探る「AZERAI CAN THO」〈前編〉
-
クリエーティブな環境が子どもの心と体を育てる。
建築家・手塚貴晴が「世界一楽しい」幼稚園を語る。
-
世界にひとつだけの空間をDIYで、自分でつくる!
TOOLBOX・来生ゆきさんに学ぶ壁を使った簡単DIY
-
住む人の想像力を刺激する 「間取りのない家」へようこそ
テリー伊藤さん・建築家伊藤立平さんと考える未来のマンションのかたち
-
職人技をリビルドして京都はデザインの最先端になっています
100年後にも続いていく手仕事を作る
-
デザインは「出汁を引く」のと同じ感覚です
インテンショナリーズの引き算建築哲学
-
「いいデザイン」の裏には、デザイン心理学がありました
iPhoneからキッチンまで、使いやすいアイテムは人間中心に出来ている
-
“未来の文房具”をテイスティングする
文房具ソムリエール菅未里さんも夢中になった!?
-
モノを空間と場所から見た、もう一つの「ミラノ・デザインウィーク」
ミラノ在住のライター田代かおるがリポートする、世界最大のインテリアの祭典
-
リユース・リサイクルの究極を徳島・上勝町RISE&WINに見る
建築家・中村拓志氏のサステナブル建築案内 Vol.2
-
高知・梼原町を魅せる隈研吾建築
建築家・中村拓志氏のサステナブル建築案内 Vol.1
-
「モノ」にまつわるストーリーを受け継ぐライフスタイル
遠山正道氏が考える「モノ」の価値
-
プロに学ぶスマートフォン撮影術
SNSでカッコいい写真をアップするためのガイド
-
Plantica木村貴史が提案する贈る花・迎える花
飾る場所・喜ぶ相手で考える選び方・楽しみ方
-
安田美沙子の京都のくらしデザイン探訪
「むかし」と「いま」のスタイルを学ぶ
-
淵上正幸と巡る話題の海外集合住宅建築
建築ジャーナリスト・淵上正幸と世界のセンセーショナルな集合住宅を探る
-
「ワンダーウォール」に学ぶアートのある住まい
インテリアデザイナー片山正通氏の事務所「ワンダーウォール」からアートと暮らすヒントを見つける!
-
快適ミニベロ〈MINIVELO〉ライフ
おしゃれで、快適なミニベロを、あなたの素敵な生活のパートナーに