スマートフォンでパチリ、「自分のいま」を投稿できるので日本でも人気に火が着いたSNSの写真投稿。ただし、イベントごとがあると友達同士で似たような写真がFacebookやInstagramにアップされるのもしばしば。ニュアンスのある写真を撮るにはどうすれば?そこで自身もInstagramerである人気写真家・伊藤徹也さんと一緒に街ロケをしながら「スマホ写真のコツ」をレクチャーしていただいた。この6Tipsを実行していけばあなたもきっとカッコいいスマホ写真が撮影できるはず。
1968年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。『Brutus』『CASA Brutus』『Number』などで活躍。特に旅の写真、何気ない日常を切り取った写真に定評があり、世界中で撮影を行う。雑誌『Brutus』の旅特集ではペルーやヒマラヤスリランカ、南極まで訪れた。そんな旅の合間合間にiPhoneで撮影しアップしたInstagramは人気が高い。
写真のプロがロケの際、最初に探すもの。それは“光”だ。太陽光の場合、どちらから光が入って、どこが影になるのか。室内の場合、どこが光源なのか。スマホは「できれば人工の光ではなく自然光で撮影したほうが柔らかくなる。そして光っているのは“光源”だけじゃないんですよね」と伊藤徹也氏。「例えば窓ガラス。鏡。金属。そしてこういう自然の中だと水面など。太陽光を反射して、コントラストが高い」画面の中で一番光っているものが、一番強調される。街に出て光っているものを探し、写真を撮影してみよう。
東京タワー近辺の池の水面の煌きを撮影する伊藤氏。この撮影はすべてiPhoneで行った。
ニュアンスのある風景写真を撮るのにおすすめなのが逆光。ただし、風景は刻一刻と変わるのでシャッターチャンスを逃さないために、まずは「スマホのカメラの設定を初めからスクエアに指定しておく」と伊藤氏。
「スマホは賢いので、逆光の風景にカメラを向けると『暗すぎる』と判断、自動的に露出を調整してしまい、ニュアンスのない写真になる。それを防ぐためにはカメラを下に向けておいて撮りたいものに向けたらすぐ撮影する。手でカメラレンズ部分を軽く覆っておいて、パッと出してすぐ撮る。何度か試してみるといいですよ」(伊藤氏)
レンズを手で覆ってすばやく撮影を何度も繰り返す伊藤氏。同じ画角で思ったとおりの光が撮れるまで粘る。後で使うフィルターや露出調整はあくまでサブ。原版でいい写真を撮影することが大事。
「写真映えするものにもセオリーがあるんですよ。色のサークルで反対に位置するものの組み合わせを補色と言いますが、赤+青緑。紫+黄緑。黒と白。完全に正反対だと目がチカチカする場合もありますが、こういう補いあう色を画面の中に入れると写真が引き立ちます」(伊藤氏)
街歩きをしながら注意して探してみると、あるある。モスグリーン1色に見える植物はよく見ると細く白い産毛のようなものに縁取られ、その緑が際立っている。横断歩道もしかり。長く伸びた芝生の上に落ちた紅葉。また大きく開いた薔薇の花は赤1色に思えるが影になった部分が黒い。
「意識して探してみるといろいろ見つかりますねえ」と伊藤氏。撮影中を写した右の写真でお分かりのように、道路上の吹き溜まりやマンションの植栽など、まずは身近にある半径50mの中で探してみてはいかがだろうか。
「補いあう色があると、光がフラットでも絵になります」
例えば人の集合写真を撮影するときも、際立つ色の洋服同士の人に並んでもらうとよいかも。
こちらは高輪プリンスホテルの駐車場入口でぱちり。
道路の植栽も見逃さない。とはいえ、葉を並び替えたりはしない。自然はありのままが一番。
名所旧跡を訪れ、東京タワーのように誰もが知るアイコン的建物を撮影する場合、プロはどうやって個性を出すのだろう?
「アイコン的建物は左の写真のように堂々と、奇をてらわず撮影する。それは王道だから一枚は押さえておいて、あとは周囲を歩きながら、ユニークな視点を探す」(伊藤氏)
東京タワーの周りを歩き回りながら伊藤氏が発見した視点。それは網目のように織りなす公園の枯れ枝を手前にいれ、背後にタワー上部の一部だけを入れたもの。切り絵のような枝と抜けるような青空のコントラストが美しい。
いろいろな角度・高さから東京タワーを撮影する伊藤氏。
「写真の基本なんですが、撮影時に撮り方を工夫してなんとかするのが一番大事です。フィルターや露出の調整はあくまで補助として使うのが自分は好きですね」と伊藤氏。上で紹介した写真は撮影時と調整終了後を並べてあるので見比べやすいだろう。アプリのフィルターを使う前に、カメラ自体に備わっている露出調整機能を使うだけで、写真の雰囲気がかなり変わる。
「アプリのフィルターもよく出来ていると思うけれど、フィルターが丸く入った跡が見えたりするのが苦手で。最後の手段として使うようにしています。写真の中の光がよっぽどフラットでダメなとき、とか、人物が写っているのに寒色系になったときとか」
伊藤氏が使うフィルターはAMARO, MAYFAIR, RISE, HUDSONくらい。人が写っているものは黄色によせたほうが暖かく、肌色も自然に見える。スマホで撮影したノーマルのものより一段階明るめに露出調整すると、伊藤氏の軽やかな世界観に近づけるかもしれない。
左上の美しい椿は水道局の植栽を撮影したもの。
キャンドルが灯った素敵なバーやレストランで撮影しようとしたらフラッシュが光り、周囲に注目された上に料理写真も不味そうに写っている……そんな経験誰しもあるだろう。
機材の種類は違えども、スマホは暗い場所の撮影を苦手とする場合が多い。
「暗い店内こそ、Tips1の『光を探す』です。基本フラッシュはなしで、明るいところを探してそこに料理やグラスを移動させて撮影しましょう」と伊藤氏。きっちりものが見えることより、その場の雰囲気を映しとることを優先、という考えだ。
撮影協力:R2 SUPPERCLUB
東京都港区六本木7-14-23
TEL:03-6447-0002 http://www.r2sc.jp/jp/
バーなどではテーブルの上でピンスポットが当たる場所にお皿を移動して。
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