歴史ある街並や寺社仏閣、そしてそこに暮らす人々の生活や文化などが他の地域にはない独自の空気を纏った都市として国内外から注目され、年間数多くの人々が訪れる人気の街、京都。この町の人々は伝統ある「むかし」を尊重しつつ新しいものを採り入れ「いま」の自分のものにすることが上手。それがまた新たな伝統として定着する、という歴史を繰り返してきた。今回は「むかし」と「いま」をバランスよく取り入れるすべを学ぶべく、古くから続く老舗、伝統に革新を採り入れた和食レストラン、酒や花を楽しむための器やグラスを扱ううつわの店を訪ねてみた。ナビゲーターは女優・タレント・ランナーとして幅広く活躍の場を広げている京都出身の安田美沙子さん。それでは彼女と一緒に京都の「むかし」と「いま」のくらしのデザインを巡っていこう。そこには生活に花を添え、豊かな暮らし方のヒントがきっと見つかるはずだ。
タレント、女優。1982年生まれ、京都府出身。数々のドラマやバラエティー、CM、雑誌等で活躍中。またフルマラソン自己記録3時間44分56秒とランナーとしても活動している。現在は、CBC「やすだの歩き方」レギュラー出演の他、4月7日スタートのドラマ『鉄子の育て方』(名古屋テレビ)にも出演。 公式ブログは「MICHAEL」 http://ameblo.jp/misanna
京都の街は少し歩くだけで、ところどころに点在する寺社仏閣や町家など、歴史と文化を感じることができる。一歩路地を入るとタイムスリップをした感覚に陥るほど、その景色がガラリと変わる。今回散歩をしたのは、歌舞伎の演目で石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」と大見得を切った山門があることで有名な南禅寺、そして平安時代に商工業を中心とした都市型の住居であった、伝統を感じさせる家屋「町屋」が並ぶ祇園四条。
平成2年オープンのうつわを専門に扱う店舗。古美術商に生まれたオーナーが、気軽に入ることができるお店を作りたいと考え、うつわ屋をはじめた。ひらがなと漢字を組み合わせたちょっとニュアンスのある店名は、オープン当時、南禅寺の紅葉がキレイだったこと、また生活に花を添え、器を介して、思い出などの会話が聴こえてくるような場所にしたいという思いが込められている。オープン当初は伊万里や伊賀のものなどを扱っていた。がその後、多くの作家を集め百の趣きを百の盃で表現する”百趣百盃”というぐいのみの企画展をおこなった際、骨董とは違う、作家それぞれの個性が出てくる面白さに気づき、オリジナルの器を制作してもらうように。「京都には、うつわ屋やギャラリーも多く、他の場所にはない、ここだけのものを作ってもらえるのが魅力。他の人とは違う、自分だけのうつわを求める人にはきっと足を運ぶ価値はあると思いますよ」とオーナーの梶さん。人気の観光スポットである南禅寺のにほど近いので、自分だけの逸品を探してみるのもきっと楽しいはず。
雰囲気のある町屋を活かしたスタイリッシュな空間の中で伝統的な日本料理を楽しめる和食ダイニングIZAMA。「伝統と継承、そして再生」をテーマとし、建築家の永山祐子氏が空間デザインを、料理は日本料理界の重鎮、神田川俊郎氏が監修をおこなっている。「京都の日本料理」というと敷居が高い感じがするが、しりごみしないでもっとカジュアルに味わっていただきたい、という思いが込められている。外観は町屋そのものだが、店内は光を採り込んでほどよく明るい。インテリアには和の素材を用いており、落ち着いた雰囲気で食事を楽しめる空間となっている。庭にある蔵はリフォームをおこない、特別料理を提供する個室に。メニューも、朝は一品一品手をかけた京都の家庭の味を感じることのできるお得なおばんざいのビュッフェ、昼は手頃な価格で京食材などを堪能できる京のおばんざい御膳、そして夜は会席+アラカルトで本格的な日本料理を楽しめる内容となっている。京都の町中で繁華街から歩いて足を運べ、町家を活かしたモダンな空間で、きちんとした京都の和食を味わえるお店として、知っておいて損はないだろう。
1818年(文政元年)から商いを続けている棕櫚製品を専門に取り扱う老舗。棕梠(シュロ)とはヤシ科の植物で、その葉を使い、内藤商店では様々なホウキをひとつひとつ手作りで仕上げている。懐かしくまた歴史を感じさせる日本家屋の店舗は、まさに京都に似合うたたずまい。外に看板もない。が、店に入ると明るく気さくな女性店主(7代目)が気持ちよく迎えてくれる。「いつもはもっとたくさんの種類のほうきが並んでいるんですよ。でも最近、一般の人や若い人も多く買いに来てくれるようになって、いっぺんに売れてしまうと、基本は手作りだから商品が追いつかなくなってしまうんです。でも予約などは受けていないので、欲しいと言ってくれる人はお店に来てもらうしかないんです」と店主。ここのほうきとの出逢いは運命に左右される。ほうきの種類(柄の長さや毛質)も様々で、中にはボディブラシのようなものもある。棕櫚製のほうきは、腰が強く、掃きやすいと評判で、その上、静かで、埃も舞わず、価格もお手頃。京都を訪れる際、一度は足を運んでみて欲しいお店だ。
基本的にアポイントのみで来店。静かな店内にはオーナーであるMASAさんが目利きをし、セレクトした骨董がそれぞれの存在を最大限に輝かせるようレイアウトされている。こちらで扱っている品物は「お茶やお酒を入れて楽しめ、美しいと思えるもの」「人を迎えるときに、魅せるものとして、花を生けることに使えるもの」。そして「それらの空間を演出できる調度品」という3つのジャンルで構成されている。このお店は、MASAさんが訪れた一軒のバーとの出会いがはじまりだという。「お茶室のような場所で、一客のアンティークのグラスに酒を注いで飲むんです。グラスに酒を注ぎ、それをゆっくりと眺めながら酒を味わう、その時間が実に楽しく、自分でも実践しようと思い、アンティークのグラスを購入したのがそもそもなんですよ」そんなMASAさんが大切にしているのは自身がピンとくるテクスチャーと色。そのお眼鏡に叶ったものがこのギャラリーに飾られる。ここを訪れてMASAさんと話をしてみればもしかしたら自分が探しているもの、必要なものは何か、出逢えるかもしれない。
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最近、京都でみられる古い建物や伝統的な家具、食器などを新たなカタチで活かし、若い人を含め多くの人たちに受け入れられるようにしていくという試みはとてもいいと思います。私の地元ですし、自慢の街なので、いつか京都の魅力を活かしたカフェなど、自分の居場所的なものを作りたいなと思っているんですよね。また京都の伝統的なものに関しても、身近な生活の中でいえば食器や着物など、もっと使ったり、着たりしていきたいと思っています。ドレスや洋服も良いのですが、やはり着物って素敵なんですよね。大人になり、ようやく伝統を受け継いでいるものの良さが少しずつですけど、分かるようになってきたのかもしれません。これからもっと分かってくるのかもしれませんし、ぜひそうなっていきたいですね。そのために、時間に余裕がある時には、また改めて京都の街を巡ってみたいと思います。
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